人気ブログランキング | 話題のタグを見る

一話   真偽都市国家   9

「ちょっ・・それってまずいんじゃないのか」
「まずいに決まってるよ~」
もう相手の顔すら振動でぶれて見える中、俺は必死にここからの脱出方法を考えていた。積まれた一山が邪魔だが、彼らをクッションにすれば何とか助かるんじゃないのだろうか。決して自己中心的な性格ではないが、この状態の場合別だ。とりあえず助かる方法を考えるので必死だった。フィーリはぶつぶつと何かを唱えていたが、騒音のためにその言葉は分からない。
「・・それにね」
「なんだ」
「特殊なものだから解除すらできないんだ~」
と、いうことはだ。この後この建物が向かう運命は決まっていた。つつぅっと冷や汗が流れるのを俺は感じた。結末は一つ。横には苦笑いとしか考えられない笑顔。
「もうすぐ壊れるよ~この建物」
そう言ったのはフィーリ・・かもしれなかった。
その一言と同時に建物は崩れた。
足元には空虚が広がる。一瞬だがふわりと浮いた気がした。足元の下にはぽっかりと空洞が口を開けて待っていた。そのまま支えを失い落下する。
「わあぁぁ~~!!待って待って待ってぇ~~!!!」
間抜けに叫んだフィーリはがしっと俺の腕をつかんだ。一緒に落下して行く。そして己が落ちるのと同時に、白塗りされた宿屋の天井が自らの上を落ちてくるのが視界の端でちらりと見えた。避けられない。ここは空中だし・・あまりにもでか過ぎる。剣を抜いて斬ることも出来ないだろう。そう感じた俺はとっさにフィーリを引き寄せ、背に庇うのだった。手には剣をしっかりと持って。何かがぶつかる音がした。何にぶつかったのかは分からない。叫ぶ声が聞こえる。周りには人と瓦礫が無造作に放り出された世界。砂煙がうっそうと辺りを覆う。
「無事か・・・?」
自分の声が遠くから木霊している。
幻聴か?・・それとも・・。
こんなところで馬鹿な死に方するものか。
そう思いながらも、俺の意識は暗黒世界へと吸い込まれていった。

by vrougev | 2005-09-30 19:38 | きらきら☆まじしゃん【休止中】