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はろうぃんな人々   1   

「静ちゃん♪お菓子ちょ~だい。くれないといたずらしちゃうぞ~」
にーっと笑いながら静羽に手を出す。今日は特別な日。猫耳をつけて作り物の黒い尻尾を揺らす。首には金色の大きな鈴。くいなは完璧な黒猫の仮装をしていた。
「はい、お菓子。昨日作ったから美味しいかどうかはわからないけど・・」
少しためらいながらも、くいなの手に小さなピンク色の袋を乗せてあげる。中には数枚の手作りクッキー。
「ありがとぉ~!!静ちゃんも似合ってるよ♪」
そうお礼と共に頭を下げてくいなはまた別の人へと駆けてゆく。
今日は何の日か。今日はハロウィン。仮装とおふざけが許される日である。
白亜の王宮で、何故こんなことをやっているのか。
それは、一週間前の王様の一言で始まった。

「ハロウィンは皆で仮装パーティーじゃ」

その提案に意義を出すものはいなかったが・・。
(顔ばれちゃうんじゃないのかな・・?)
王宮内の女官や兵士たちも参加である。彼らにはきっとばれていると思うのだが、静羽としてはどうしても気になるところであった。
そう思う静羽ももちろん仮装をしている。黒いシルク地で作ったワンピースに薄紫のオーガンジーを何枚も何枚も重ねている。頭には同じような形で作られたとんがり帽子。ほっそりとした肩が出されていつもの清楚な印象に妖艶さが加わる。静羽の仮装は魔女。くいなと一緒に決めたものだ。
「さって・・皆を探さなきゃ」
仮装は当日まで秘密なのだ。どんな仮装をしているのだろうか。期待に胸を膨らませながら王宮の廊下を進むことにした。
慶之さんはどん格好をしているかしら・・
そんな思いを抱きながら。

by vrougev | 2005-10-20 22:06 | キセツモノ