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はろうぃんな人々   5

「王様・・その仮装は無理なんじゃねぇ??」
思わず夕京は口に出した。白亜の王宮のもっとも敷居が高い部屋。そう、謁見の間である。そこで一人仮装に苦しむ王がいた。そう、この王宮で誰よりも仮装をやりたがっていた人物だ。
「ん?そうかの~?でも、一回やってみたいんじゃ」
「なら、止めないけどよ~」
夕京はくいなに対抗して白い耳をつけている。たれた犬の耳。きちんとふさふさの尻尾もつけている辺りが律儀である。そして、人懐っこそうな顔がその様子にまたぴったりと合っている。彼は王座に寄りかかり、クッキーを缶から口に運ぶ。
目の前ではふがふがと言葉ならぬ、言葉を王は発しながら必死に衣装を身に纏おうとしているのだった。が、明らかに無理である。床には大量の白い布がぐるぐるととぐろを巻いて横たわっているのであった。
ふがふがふが、というもがき苦しむ音をバックで聞き、その光景に流石の夕京もため息しかつくことが出来なかった。
「王、やっぱミイラは無理だって」
「いんや、まだまだ」
王の挑戦はまだまだ続くらしい。そうそれとさぁ・・と夕京は続ける。
「王様~お菓子をくれなきゃ悪戯するぞぉ~!!」
「そんなん後じゃ~」
「分かったさ♪」
警告のように言ってみた後、小動物かのようにすばやい動きで部屋から出て行った。
部屋に山ほどある包帯を引っ張り出しながら。しゅるしゅるしゅるという何かが擦れる音の後・・まもなくして奥でぎゃぁっという悲鳴と大きな鈍い音が聞こえた。
廊下には両手に白い布を持った夕京。
「やっぱ悪戯し放題はいいな~っと♪」
自由に人をからかえるのはこの日じゃないとなぁ。
「さて・・マンゴープリンでも食べにいこっと」

by vrougev | 2005-10-26 23:12 | キセツモノ