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はろうぃんな人々   7

元の世界へと返そう。白亜の王宮。
「よ、慶之さん・・?」
「静羽さん!?!?」
廊下でばったりというのはこのことかも知れない。曲がり角を曲がろうとしたところで静羽は誰かにぶつかった。急いでいたため廊下を駆けていたのだ。どんっという何かにぶつかり静羽は転んだ。相手もそのまま腰を付いたようだ。ごめんなさい、と言おうとして気がついた。それは探していた人物。新田慶之、その人であった。漫画みたいだが事実である。本当の話だ。
「大丈夫ですか?静羽さん」
なかなか立ち上がらなかった静羽に慶之が心配そうな声をかける。平気ですよ、といって立ち上がるものの心のほうは全然大丈夫じゃなかった。
きっと顔が真っ赤になっているだろう。まともに慶之をみられずにずっと下を向く。
「静羽さんは魔女・・さんですか??」
「え、あ、はい。一応魔女なんですけど・・見えませんかね・・」
自信なさげにどんどん小さくなって行く声に自分の情けなさがにじみ出ていると思った。顔から火が出る思いだ。
「いえ、可愛いなぁと思って・・可愛いです」
ちらり、と慶之のほうを盗み見ると彼は白い衣装で身を包んでいる。
白い柔らかそうな上着に金の刺繍。同じく白いズボンにもさわやかな模様の装飾。アクセサリー類は一つも付いていないが、その代わりに、
真っ白な白い翼。
純白で・・何もかもを包み込むような美しい翼。彼の魔力と合わせて神々しさが増す。
「変・・ですよね」
「ううん・・凄く綺麗・・」
ほぅ・・と恍惚状態で呟く静羽に慶之は恥ずかしそうにしながら言った。
「Trick or Treat」
お決まりの単語。この日しか使えない、特別な。
「これ、どうぞ」
慶之に手渡されたのは一つ袋。くいなにあげたのとはまた別の色の少し大きめな袋。中身は・・一切れのパイ。
「あの・・美味しいかどうかは分からないんですけど・・ちょっと自信なくて・・」
しどろもどろに説明しようとする静羽の顔の横を何かが通りすぎた。
と、同時にふわり、とやさしい感覚が生まれれる。それは静羽の頬から生まれ、すぐさま全身へと広がる。
「!!!!」
「お礼、です」
そういった慶之の顔は静羽・・いやそれ以上に赤かった。
その様子におかしく思う。そして、同時に嬉しさも。
「静羽さん・・あの・・」
「な、なんですか・・?」
顔が真っ赤でしどろもどろの二人は傍から見たらとてもおかしいだろう。
「僕は・・」
「おい!!東で魔族が暴れているそうだ!!」
飛鳥の声で続きはかき消された。突然ブローチから響いてきた声に二人して目をぱちくりとする。
「CIRCLE、仕事だぞ」
飛鳥の声は何かを楽しんでいるかのようなそんな響きがあった。
「わかったぁ~」
「あいよ~」
ついで、くいな、夕京の声が届く。
「「・・・・」」
静羽と慶之はお互い顔を見合わせた。そして、答える。その声は見事にはもった。
「「了解です」」
二人の顔には笑み。柔らかな。悪魔とは似つかぬ、
そう、幸せそのもの。

                         はろうぃんな人々   Fin

by vrougev | 2005-10-28 20:59 | キセツモノ