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三話   不幸せの蒼い鳥   2

「これ・・本物なのか」
「それを僕らが見つけるんじゃないかぁ~♪」
るんるんっといった様子で先を歩く。いつもはロジェの後を散々文句を言いながら付いてくるのに、今日はやけに機嫌がよい。
「・・見つけたら願いを叶えてもらうつもりなのか」
思い立って聞いてみる。するとにこやかな眩しいばかりの笑顔が返ってきた。
「もちろんっ♪」
やはり、だ。
「だって叶わない願いも叶えることが出来るかもしれないんだよ!?!?」
「例えば?」
興奮気味に話すフィーリに対して興味もないが聞いてみた。こいつは何を願うのか。しばらくうなった後フィーリは変わらず楽しそうに話す。
「ん~・・僕が本当に女の子になるとか♪そしたらロー君とず~~っと一緒に居られるでしょ?」
「するな。やめろ。いなくていい。ふざけるな」
間発をいれずにロジェは思いつく言葉全てで否定した。誰がこんなやつと一緒にいたいか。しかし、否定するも背中にはぞわっと悪寒が走るのだった。
「そこまで否定しなくたっていいじゃないかぁ・・冗談なのにぃ・・」
少しすねたようなフィーリは軽くぶつぶつと語尾を濁すが表情からして明らかに楽しんでいる様子だった。
「ともかく、ここは何処だ」
森・・といったら森に失礼だろう。だからといって沼などでもないはずだ。あくまではず、というロジェの仮定と予想の範囲なのだが。ともかく周りの様子は悲惨極まりない。荒れ果てた大地には倒れた樹木や枯れた草でひしめいており、腐敗という悪臭を放っている。湿った地帯ではそれは更にひどく、自然の廃棄物という喩えがぴったりだ。そんな喩えは嫌だろうに。そして、そのせいなのか日はまだ高いはずなのに、暗くうっそうとした中では何もかもが薄暗く感じるのだった。
「この様子だと人里はないじゃないのか」
「でも!!すぐ近くがハウ・ガーディーだと思うんだけど・・それに二ヶ月前はこの辺にいたってぇ・・」
語を繋げるたびにだんだんと小さくなるフィーリの声。全くこいつは・・。
「魔法って手はないのか」
「あっっ!!そっか!!」
その手があったか~、と手をたたくフィーリに何も言わず遠くを見やる。もうどっちがどっちだか分かったもんじゃない。
フィーリは自らの腰に巻いている布をしゅるしゅると解いた。ちょうど両腕を伸ばしたぐらいの長さの若草色は目にも鮮やかな上物の絹で出来ていた。そして、金縁がされ、その上から銀糸で刺繍がされている。何か複雑な紋様と、魔法文字。ロジェには見てもさっぱりだ。そして解いた布をしっかりとフィーリは自分の持っている杖に巻きつけた。外れないようにしっかりと縛るのに奮闘している。そして、
「よしっ!!完成~♪」
出来たよ~♪とはしゃぎながら杖を振り回す。何がどう出来たのかはわからない。姿かたちが分からない人は巨大な釣竿のような物体と思ってくれていいだろう。
「それ・・どう使うんだ」
「まぁ、見ててって♪」
ロジェの疑問にフィーリは得意満面の様子な笑顔を見せた後何かをぶつぶつと唱えた。と、若草色の布が見る見るうちに光の粒子に包まれる。そして、唱え終わった後、フィーリは勢いよくそれを振りかぶった。道の先に向かって、ちょうど釣り糸を川に投げ入れるように。
「届け~~~っと♪」
しゃあぁぁぁぁ
布は際限なく伸びてゆく。地に触れることなく宙を漂った姿のままわずか残った木々の間をすり抜けて、それは伸びていった。
「さっ、これで迷わずいけるよ~♪」
すごいすごい~?と杖を持ったままロジェに向かって手を振るフィーリはやはり楽しそうにぴょんぴょん跳ねる。
「しっかし・・何でもありだな魔法ってやつは」
「出来ないことも多いけどね♪」
ともかく、先を急ぐとしよう。

by vrougev | 2005-11-14 22:02 | きらきら☆まじしゃん【休止中】