くりすます★まじしゃん 2
十時半。ロジェは約束の時間、待ち合わせ場所に向かった。
「くそ、遅れたか」
少しばかり道が分からず手間取ったのだ。何故ここはこんなにも像・・いや、遊園地なるものが多いのか。もしかしたら一、二分遅れたかもしれない。
フィーリの指した銅像とは羽の生えた人をかたどっているものだった。羽の生えた人が天に手を差し伸べている図。それが何を意味しているのかなどロジェには分からなかったが、少なくとも待ち合わせ場所として多くの人に利用されていることはまちがいなさそうだ。像の周辺には多くの人がもたれかかったり、ベンチに腰掛けたりと人を待っている。
さて・・どこにいるのか・・。
「ごめんねぇ~待ち合わせしてる人がいるんだ♪」
聞き覚えがある声が人ごみの中から聞こえてくる。銅像前でも一番人が群がっているところである。若い青年、大学生ぐらいだろうか。何人もその中心にいる人に向かって話しかけている。要するに、ナンパ。そんなものして何が楽しいんだ、と一人ロジェは思いながら横目でそちらのほうを見やる。
薄茶の長い髪がこの位置からだと見える。
薄茶の髪、それだけでロジェは嫌な予感がした。
その長い髪の持ち主は・・美しい朱色のワンピースを着ていた。それだけではない。同じ色の三角で先端には白く丸い形のふわふわとした綿がついていて、同じようにワンピースの裾を、そして同様に朱色のブーツを飾っている。
正直、派手だ。普通人前でこんな格好するやつはいるだろうか。中にはいるだろう。しかし、大半の人は遠巻きに引いてみるだろう。
しかしどうだ。
それがもし・・女性ではないのなら・・。
嫌な予感から目がそらせない。そのロジェの視線に気がついたのかその人物は振り返る。
薄茶の瞳。可愛らしく小首をかしげる仕草。そして・・
「あ~♪ロー君♪」
ロジェの肩に何かがのしかかったような気がした。よく漫画やコントなどで見る百トンハンマーや重石の意味がここでよく分かった気がした。
その髪の持ち主・・いや、正真正銘魔法使い、フィーリ=メ=ルーンはにこにこと微笑みながら自らが作った人ごみを掻き分けてロジェに近づいてくる。
「来てくれたんだ~♪嬉しいな♪」
周りの男共がその行く末を見守る中、わずかにだが頬を染めたフィーリは男に見えないその姿で俺に腕を絡めた。ぎゅっと力強く。お願いだからやめてほしい。
「嬉しいな♪・・じゃない。なんなんだ、その格好」
あきれて言葉をつむぐのも疲れる。きまってるじゃないかぁ~♪と楽しそうに寒空の中響いた。
「サンタガール♪」
疲れでその場に倒れようと思ったぐらいの疲労をこのときロジェを襲った。
by vrougev | 2005-12-05 00:04 | キセツモノ