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くりすます★まじしゃん   4

世の中には開き直ることも大切だと知ったのはフィーリと出会ってからだ。
それまでは成せば成るとか思い必死だった。今考えればなんて世間知らずであったのだろうか。
「ね~ロー君♪僕、ソフトクリームが食べたいなぁ♪」
「勝手に食べればいいだろう」
全ての原因はこの男だ。女の振りをした男。立ち振る舞いからして、男から見えないのだ。ちらちらとこちらに視線を送ってくる馬鹿な男の多いこと多いこと。この事実にロジェはあきれるしかなかった。
殺し屋に狙われているといわれた人物は小さな少女だった。長い髪をそのまま下ろしリボンで飾っている。服は水色のワンピースに紺のカーディガンが掛かっている。少女は少し離れたところでぺろぺろとソフトクリームをなめている。その様子には幼子特有の愛らしさがある。それに影響してなのだろう。ロジェの腕をフィーリはがくがくと揺する。
「ね~ってばぁ♪」
「・・・買ってこいと?」
「うん♪」
にこにこと変わらぬ笑顔を保っているフィーリに何を言っても引かないことは分かっている。成せば成らない事だってあるのだ。ロジェにとってならないことはこの女男に逆らうことだ。腕からフィーリを引き剥がす。
「ここで待ってろ」
そういって先ほど目の端に留めておいた売店を探す。ひゅうっと寒風が吹いた。この寒いのに冷たいものをわざわざ好むやつの趣向が分からないな。そんなことを思いながらロジェはゆっくりと歩を進めた。

一人になったフィーリはというと・・
「ごめんね~。待ってる人がいるんだ~♪」
山のような男の中の中心にいた。周りにはそれこそ外も見えないようなぐらいの人だかり。ロジェがいなくなった途端にこれ、だ。
(ロー君ってやっぱり周りから見たら怖いのかなぁ~)
そんなことをにこにこと笑いながら思うフィーリであった。
こんな中でも彼女は見失わない。なんせ、依頼主だし♪
依頼が入ったときは驚いたけど、ね。
まず、彼女を遠くから魔法でバーン、はないだろうとフィーリは読む。大切な情報源を自らの手で散らすことになるのだし、何より周りも巻き込む恐れがある。大事にはしたくないだろうから接近して来る他は考えられない。
それにはこの大群は邪魔なのだが、まぁ面白いので放置しておくことにする。
しばらく彼らににこにこと微笑みかけ続けているときに、それは現れた。
黒い服にサングラス。正直こんな遊園地とか言う場所とは全く無縁の空気を持った男。
彼女に何かを話しかけた後、その手を無理やりにでも引いて行こうとする。
こんなに登場が早いとは思わなかった。ちょっと早く何とかしないとやばいかもしれない。周りさっと見渡すもののロジェの姿はない。まだ、戻っていないようだ。
(仕方ないなぁ~)
そう思ったフィーリは次には歩き始めていた。しなやかな足取りにヒールの音。かつかつかつと響いた。そして・・。
「もうっ♪ずいぶん待ったよ!!遅れちゃだめだって言ったよ♪」
当然予想してなかった人物の登場で向こうは一瞬だが破顔する。驚きのためだ。しかし、すぐ次の瞬間には持ち直してまた表情が読めなくなる。
「あぁ、すまない」
ノリはあるようだ。
「早く連れてってよぉ♪」
「え・・あぁ、分かった」
そうして少女とフィーリの手をとってこの場から去ろうとする。しかし、フィーリがそれを許すはずもない。少女は依頼主だ。
「ん~!!女の子は要らないでしょ!!もしかして・・ロ*コンなの・・?」
「そっ、そんなわけないだろう」
「じゃぁ、ぼ・・じゃなかった、私だけを連れていって?」
魔法使いは言葉と音を支配する。瞳に輝きを宿した乙女(女装)の言葉に一概の男が勝てるわけもなく。
「・・いいだろう」
「大好きっ♪」
そういって腕にしがみつく。これでよしっと。少女の顔を見る。少しの動揺で瞳が揺れているに大丈夫、とアイコンタクトをしてやる。これで、平気だろう。
「早く行こう!!」
腕の力を強める。口元には策士の笑み。
ロー君、ごめんね♪

by vrougev | 2005-12-25 20:36 | キセツモノ