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【無きお題サイトより】004   お前だよ! お前!

放課後、真っ先に部活に駆け出そう急ぐ僕の目の前に親友が立ちふさがりました。
「よっ、相棒!!いい話があるぜっ!!」
彼は僕のことを相棒と呼びます。彼と僕は完全に正反対なのに親友でした。そして、相棒でした。
「どうしたの?ヤスヒロ?」
鞄の中に荷物を詰めていた僕はいつもと変わらない彼の姿に微笑みました。彼のクラスは僕のクラスの三つ先。どうやら一足早く終礼が済んでいたようです。
「いい話なんだよっ!!・・って、ツカハラ~席借りるぜ~」
そういって僕の前の席に陣取りどさりと椅子に座りました。彼はなかなか豪快です。彼と向かい合うため、机の上に出ていたものをしまいました。彼は机に頬杖をつき、ずぃっと顔を寄せました。
「相棒!!お前・・ミサワのこと、好きだったよな!?」
「別に・・そこまで・・・」
ミサワとは彼と同じクラスの小柄な少女でした。僕とは直接係わり合いの無い少女でしたが、僕が彼女に対してなんらかの思いを抱いていることは確かでした。彼は真っ直ぐな真剣な目で僕に問いかけたものだから、彼と目を合わせたくなく僕はそっぽを向きました。
「い~んだよ!!俺は知ってんだから!!で、だ!!彼女も好きな人がいるらしい!!」
「ふぅん」
僕はわざと興味の無い声で応じたのですが、彼はそんな僕の様子を無視し学ランの内ポケットからごそごそと一枚の紙切れを取り出しました。正確には彼の不合格だった漢字テストの裏側にそれは書いてありました。点数はというと・・・気にしないことにします。
「さぁ、読め!!本人から聞いたんだから確かなんだよっ!!」
ずぃっと彼はお酒でも勧めるかのように僕にそのプリントを押し付けたのでした。
(本人から聞くなよ。普通教えてくれないぞ)
僕はざっとプリントに目を通します。しかし、僕は気がつくのでした。彼女が自らの好みを話した訳を。
「これって・・・」
「そのプリントはお前にやる。それ読んで彼女の理想に近づいてやれよっ!!」
僕の声を遮って彼は明るい声で僕の肩を叩きました。その笑顔はあまりにも爽やかで、僕とはやはり正反対の人間でした。彼は鞄を取ってくると言い残し、僕の教室から出て行くとそこには空虚が残りました。
(無理だよ、ヤスヒロ。これは彼女から君への告白文じゃないか)
そこに書かれている好みは全て彼のことをドンピシャで言い当てているのだから。

教室に戻った彼は一人の少女が残っているのに気がつきました。
ミサワさんでした。彼の姿に一瞬驚き、顔を真っ赤にさせています。そんな彼女に彼は言いました。
「わりぃ!!俺、別に好きな奴いるんだわ!!すげー手の掛かる相棒がさっ!!」
この事実を僕は知ることはないでしょう。実に爽やかな笑顔でした。

by vrougev | 2006-06-22 23:06 | 小話