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将来の夢

いつも元気な少女でした。明るくて周りへよく気配りをする子でした。
僕は幼稚園年長のとき彼女に尋ねました。
彼女は蕾が開いたかのように笑って言いました。春のようでした。
「お花屋さんになっていっぱいお花を売るのっ!!」

誰よりも背が高い少女でした。決してリーダーにはならないものの細かいものを見る子でした。
僕は小学校六年生のとき彼女にこう尋ねました。あの時と同じ問い。
彼女ははにかんだ笑みを浮かべて少し照れたように言いました。
「小説家になりたいなぁ。上手くまだ書けないけど夢を売る職業だと思わない?」

おとなしい少女でした。クラスの中でもいるかいないか分からないような存在でした。
僕は彼女と会話する機会はあまりありませんでしたが、三年の夏ふと思い尋ねたのでした。
彼女は無表情でした。遠くをじっと見つめたまま言いました。
「・・・・高校にいきたい。ここは生き地獄だもの・・・」

それから数年が経ったある日、僕は街で偶然彼女と再会しました。
「あれ~?久しぶりっ♪元気にしてたぁ~?」
彼女は見違えるほど明るい少女になっていました。それはまるで年少期に戻ったかのように。
ひとしきりお互いの近状を報告しあった後、僕は・・・尋ねました。
彼女はすっかり追い越してしまった僕を見上げながら笑いました。とてもとても楽しそうに。
「夢?今すぐにでもぽっくり死ぬことかな♪」

元から私って努力しようとか思わないんだよね。で、堕落する一方。
どんだけ頑張っても一番になれないでしょ?でも、頑張れって言う人々がいるんだよね~。
でも、そういう人に限って頑張った結果を見せても何一つ喜んでくれないの♪
将来なりたいもの?あったとしても無理って批判されるし。
批判されると頑張ろうって思えなんだよね、私。実際世の中には私より凄い人いっぱいだし?
んで、そんなろくでもなしな私が出来ることって言っても何もないでしょ?
なら、いても意味ないじゃない。頑張れって言ってる人たちのストレスになるぐらい?
あはは、私何もやらない人間だもん♪だから早くポックリ布団の上で死ぬのがいいなぁ~。
別な場所で死んだりすると色々大変らしいよ。自殺とかは痛いし。
まぁ、死んだら関係ないけどね~っと。


『自らの消滅』
そんなことを楽しそうに望む少女の目にはどこか寂しさが感じられた。
そのときの僕にはそれがなんなのだか分からなかったけれど。彼女は確かに望んでいた。
それ以来彼女には会っていない。
後で気がついたことだが、彼女は存在を必要として欲しかったのかもしれない。
彼女はまだ生きている。しかし、その生の価値を見出せないもの。



もし、僕があの場所で彼女を受け止めたら何か変われただろうか?

by vrougev | 2006-07-14 01:44 | 小話