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栗かぼちゃのタルトのお味は?   6

笑顔で言うことではない。全然笑えないどころかこの状態でどうするつもりなのか。
「ねぇ、ロー君・・人前で女の子を抱いて恥ずかしくないのぉ♪」
甘い声で呟くフィーリはそのままくすくすと笑う。確かにぱっと見は何処の恋人だろうというところだろうか。勿論違うが。
「僕はいいけどね・・ロー君あったかいし♪」
「なっ・・」
そう言ってロジェの手の上に手をのせるフィーリはとても楽しそうである。
「ロー君がお願い聞いてくれたら魔法解いてあげてもいいよぉ♪」
「・・・かぼちゃのタルト・・か?」
思い当たるものはそれしかない。というか、それ以外に何があるだろうか。
「そうっ♪さっすがロー君♪僕の好きなもの良く分かってるぅ♪」
ケーキの一つでこれ、か。ロジェはそのままの姿勢のままでため息をつく。
「ケーキならそこらへんの洋菓子店でも・・」
「ロー君の手作りじゃなきゃ嫌だもん」
ぼそりと呟いたフィーリは、そのままぶつぶつと何かを唱える。ふっとロジェの体が軽くなった。フィーリが解呪したのである。
「宿戻ろう~。じゃないともう一泊することになっちゃうよ~ぉ?今日中に出るんでしょ?この国」
ほらほら、とロジェを引っ張るフィーリ。その顔はやはり笑顔である。で、あるのだが。
「分かった」
ロジェは自分でこういう時に甘いと思う。それが後に命取りになるかもといつも感じるのだが正さない。悪い癖である。
「宿の前に市場。フィーリ、かぼちゃ探して来い。ハロウィンだから出回っているだろう。品種は栗かぼちゃ。なるべく緑が濃くて、大きさの割りにずっしりしているものを一つだ」
「ロー君・・作ってくれるの!?」
いきなりぱっと表情が見違えるほど明るくなったフィーリにロジェはため息混じりに言う。
「一応、お礼だ」
「ロー君大好きっ!!愛してるっ♪」
ロジェに抱きついたフィーリを引き剥がしながら言う。
「ほら、行くぞ。早くしないと時間なくなるからな」
「あ、一つ忘れてた」
はた、と思い出したように立ち止まったフィーリはロジェに手を差し出すのだった。
「Trick or Treat!!」

                                   栗かぼちゃのタルトのお味は?   Fin

by vrougev | 2006-10-20 00:53 | キセツモノ