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八話   無垢なる形代   13

「ん~でも、調べるって言ってもどこから調べようねぇ~」
「とりあえず、街中を歩いてみましょうか」
飛鳥との通信が切れた後、フィーリとカセドラルはのんびりと街中を歩いていた。まだ朝ということもあり街は活気に包まれている。色々な言葉や物が飛び交う。あるお店の前でフィーリは呼び止められる。
「お兄さん、パンはどうだいっ?」
「わー♪ありがとぉ♪優しいおじさん♪」
そういえば、朝ごはんはまだだった。焼き立てのパンを受け取り、硬貨を払う。その硬貨をまじまじと見た、パン売りの男性はおや?と言った。
「旅人かい?」
「うんっ♪」
元気よく返事をしたフィーリに男は気を良くしたのかパンを一個おまけしてくれた。
「そうかそうかー、この間も旅人が着たんでね。最近流行りなのかねぇ」
おじさんも若い頃、旅したかったなぁという言葉に相槌を打つ。
「・・で、おじさん、それどんな人?」
「ん?まだ歳若い女性だったかなぁ?何か人じゃないような位表情がなかったが、綺麗な人だったねぇ」

それからひとしきり会話をした後フィーリは男と別れた。気がつけばカセドラルがいない。周囲を探すと彼は座って待っていた。フィーリの居た方向を見ているのか見ていないのか、ぼぉっとした視線を飛ばしている。
「おっまたせー♪」
「・・・・」
聞こえていないのか、振り向かないカセドラルの目の前に手を振る。
「カセドラル?」
「・・あ、はい」
「ご飯、食べよ?」
「ありがとうございます」
カセドラルの横にすとん、とフィーリも座った。初対面というわけでもないがなんとなく居心地が悪い。なにせ、以前彼とは戦ったことがあるのだから。彼自身は記憶を失ったため、フィーリ達のことは覚えていないだろうがこちらは覚えている。あの時と比べるとまるで別人のようではあるが。
「フィーリ様はロジェ様の前でしか女装されないのですか」
悪意なく放たれた突然の言葉にフィーリは思わず喉にパンを詰まらせそうになる。
「・・いや、別にそういうわけでもないけど・・なんで?」
「本日はきちんとした男物の服でしたから」
飛ばされて気がついた後、着替えた服は男物だっただけだ。別に意識したわけでもないがどうも元々華奢なフィーリに男物の服は合わないらしい。シャツなんかはだぼだぼで体に合っていない事が人目で分かる。
女物の服のほうがかわいいから着るだけだよ、と返しパンをかじる。ほんわかと温かいパンはじんわりと体を暖めるのだった。
「ロー君・・大丈夫かなぁ・・」
この街でフィーリが動けばロジェのほうの状況も変わる。そう信じるしかないのだ。
不安を押し殺し、体を捩るような居た堪れなさを感じながらフィーリはそっと誓う。
何かあったら直ぐに飛んで行こう、と。

by vrougev | 2006-10-30 23:46 | きらきら☆まじしゃん【休止中】