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ローサンに願いを込めて   2

「起きて、起きてー!!」
ベッドを激しく揺さぶられ、ロジェはその眼をゆっくり開いた。やけにはしゃぐフィーリの声。横から寒い北風がカーテンを靡かせる。フィーリが窓を開けたのだろう。背筋にぞくりと鳥肌が立った。時計を見るとまだ夜中。丑の刻を少し過ぎたところだった。
「まだ夜中だぞ、何事だ」
「当たり前だよぉ♪じゃなきゃ、いつ仕事するのさぁー?」
寒さにか、言葉にか。少しばかりむっとしながら起き上がったロジェは目を疑った。そこはロジェとフィーリが寝ていた宿ではなく、一面真っ白な銀世界。もう部屋、という単位ですらなかった。
「何に驚いているの?」
何が起こったのかわからず目をしばたかせるロジェを不思議そうに見つめるフィーリの姿も異質といったら異質だった。フリルが付いている赤いワンピースに白のハイソックス。真冬の深夜にミニスカート。寒いで済まず凍え死ぬのではないかと思ってしまう。だが、更に目を疑うもの。それは。
「見てー♪可愛いでしょ?トナカイの角♪」
頭から二本、にょきと生えるのは何処かで見覚えのあるものだ。確かにトナカイといわれればトナカイである。問題なのはカチューシャではなく生えている事。一瞬ぎょっとしたがこれは夢なのだ。そう自分に言い聞かせロジェはフィーリに尋ねた。
「此処は何処だ。そして、何をする気だ」
「もぅっ、ロー君ってば疎いんだからぁー♪赤と白の洋服を見たら分かりそうなもんだって」
言われて初めて自分の今の姿に気が付いた。赤と白。誰がどう見てもクリスマスカラーのもこもことした防寒着。足は長靴。完全防寒対策の施された衣装はロジェの趣味ではない。
「これで、完成っ♪」
そう言ってフィーリはロジェの頭に無理矢理帽子をかぶせた。紅の三角帽子。先端には丸い真っ白なぽんぽんがついている。
「なんだ、これは」
「サンタクロース衣装だよっ♪プレゼントを配らなきゃっ♪」
「・・・真夜中に物を配るのが仕事なのか?こんなに目立つ格好で」
サンタクロース、という存在を信じない以前に知らないロジェは首を捻るのだがフィーリは気にも留めない様子でロジェをせかす。
「ほら早く、早くっ♪」
いつの間にか目の前にはそり。赤と緑。これもまたクリスマスカラーである。急かされるままにそりに乗るとそれはゆっくりと夜空へと浮かんだ。
「うわっ」
思わず声を上げたロジェにふふふとフィーリは可笑しそうに微笑んだ。そして、手に持っている杖をくるりと一回回した。
「いっくよー♪ロー君♪・・・そぉれ!!」
天へ掲げた杖から放たれる光の筋。それは遥か空まで続いて。
「さぁ、皆のお願いを叶えに行こうか。サンタさん♪」

by vrougev | 2006-12-24 19:43 | キセツモノ