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ローサンに願いを込めて   3

そりは空を翔る。魔法の力で動いているのかフィーリの引いた光の上を滑っている。星がとても近くに感じられる。普段は暗いとしか思わない夜も少し空へ上るだけで明るさが大分違うものである。しかし、なにより一番に感じるのは銀世界の中での寒さだった。夢の中でも寒さと言うのは感じるらしい。
「おい、真夜中に人の家に忍び込んで何かを上げるんだろう」
「ロー君ってば言い方悪いなぁ♪こっそりプレゼントするって言ってよ♪」
それじゃ泥棒と変わらないじゃないかぁーと異を唱えるフィーリ。
「どちらでもいい。その肝心のプレゼントは何処にあるんだ」
このそりにはフィーリとロジェ以外は何も乗っていないし、乗せる場所も無かった。
「そんなのないよ」
何事も無いかのようにさらりと答え、フィーリは笑う。
「プレゼントはロー君が作るんだからねー♪僕は助手だもの」
「何?」
「大丈夫、僕のルートは二件だけだから♪直ぐ終わるって♪」
ロジェの疑問に答えることはなく、フィーリは「さぁ初めのお家に着くよ」とそりのスピードを上げた。何も知らされていないロジェとしては何をするのか、何が起こるかもわからない。不安と言う気持ちよりも先に生まれるのはため息である。隠れてロジェはため息をつく。吐いた息は白かった。真っ白は直ぐに掻き消える。其の様子を見ていたフィーリは一言ぽつりと呟いた。
「・・ごめんね」
「何か言ったか?」
「ううん、何もー♪」
えへへ、と笑ったフィーリはある建物を見つけて「あっ!!」と声を上げた。
「あの家が一件目だよぉー♪」
それは、見覚えのある風景だった。家と呼ぶには相応しくない建物がそびえ立っている。
家、と言うより豪邸。豪邸、と言うより王宮。いや、誰がなんと言おうと王宮以外はありえないだろう。此処には彼らが住んでいるはずだ。
「あれは・・・」
「一件目は、フリフ国王宮にお住まいのアクト殿下とレスト殿下のお願いを叶えまーす♪」
フィーリは他人事のようににっこりと微笑むのだった。

by vrougev | 2006-12-24 20:35 | キセツモノ