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ローサンに願いを込めて   4

やっぱり泥棒である。ロジェは思った。王宮のバルコニーから侵入するなんて義賊か泥棒か、暗殺者か・・・どれにしろ、裏家業のやつがやるものだ。本当は煙突から入るのがサンタとやらの基本らしい。だが、此処は王宮、王族が住む城である。そんなものあるはずも無く仕方なしにバルコニーから侵入するわけになったのだった。
「ロー君、初めての割りには気配消すの上手いねー♪」
ロジェを先導するため前を歩くフィーリは「さっすがー♪」と小さく拍手をした。
「お前は初めてじゃないのか?」
「だって、毎年のお仕事だもの♪」
この位出来なきゃ仕事にならないんだよー、と軽やかに目的の部屋のバルコニーへと降り立った。ロジェも後に続く。きぃと少し軋んだ音を立てて窓は開いた。
部屋はどうやら二人で一つを使っているらしく、大きなベッドの上では二人の子供が静かに目を閉じていた。一人は黒い髪。もう一人は白い髪。彼らは普通の何処にでもいるような少年の姿をしている。だが、その招待はまだまだ幼い精霊なのであった。
「かーわいいー♪この二人へのプレゼントは楽そうだねー♪」
その顔を覗き込んだフィーリは二人へと手を伸ばした。そっと彼らの目の上に手を乗せ、尋ねた。その問いは明らかに魔術的なものが含まれていたに違いない。
「アクト、レスト。よい子の貴方達は何が欲しいの?」
寝ているのだから、答えるはずは無い。しかし、彼らは起きている時と同様声をぴったりと合わせて答えた。
「「欲しいものはない」」
おもちゃ、とも本、とも言わない。それは彼らが人ではないからなのだろうか。それとも・・。
フィーリは再度問う。
「じゃぁ、願うものは?」
この問いには暫くの空白があった。しんとした中でやはり声を揃えて彼らは答えるのだ。
「レストの」
「アクトの」
お互いが、お互いの。対で双なる存在の。
「「喜びと幸せ」」
その二人の表情は寝ているのだが、僅かに微笑んでいた。幸せそのもの。
寝ているときも繋がれた手は決してお互いを忘れる事は無く。存在を尊び、共通の時間を過ごす事を喜ぶ。それは、とてもいいことなのではないかと思う。
「・・・もう、持っているじゃないか」
ロジェは何気なく呟いた。お互いに思い思われる。それは素晴らしい事なのだ。サンタとやら存在に願うものではない。彼らはもう既に実行しているのだから。
「ほら、サンタさんプレゼント♪枕元においてあげて?」
フィーリからはい、と手渡された箱は包装紙で包まれ、赤いリボンで可愛らしく飾られていた。何処からとりだしたのだろうか。そう思いながらもロジェはそのプレゼントをそっと枕元に置いた。ぐっすりと眠っている少年達は気がつかない。そのままきたとき同様そっと部屋を後にした。再びそりは走り出す。
「一件目、おつかれさま♪後一件だよ♪」
「やっぱりロー君は凄いね」とフィーリは笑った。
「今上げたのは一体何なんだ?」
「僕は特殊なんだ。プレゼントは持ち歩かずにその場で作られるモノだから。よって配る人間も限られている。いや、欲しがる人間がいないんだけどね」
曖昧な答えにロジェは更に首を捻る。別にロジェが何かしたわけでもないし、先刻魔法を使って何かしたかのようにも見えない。じっと考え込むロジェにフィーリはふふ、と意味深な笑いをして言った。
「さて、後一件。こっちは大人にプレゼントをあげなきゃなんだけど・・」
「ほぅ」
「難しいよね、恋って。僕には分からないや」

by vrougev | 2006-12-24 21:26 | キセツモノ