ローサンに願いを込めて 6
要の国から元へと変える途中に朝焼けを見た。
銀世界が光を反射し全ての闇追い払っていく姿は神々しいものであった。
「騙してしまってすみません」
帰り道、肩と肩の間に流れる沈黙を破ったのは向こうだった。
「いや、気がついてはいた」
ロジェがそう答えると、少しへこんだようにため息をついた。
「私の変装もまだまだですね・・。結構いい線いってると思ったんだけどなぁ・・」
「姿形は完璧だと思うが、あいつはもっと人に抱きつく。それはもう五月蝿いほどに、だ」
それに騙される事には慣れている、とは言わなかった。この間もこんな偽者を見たばかりだし、耐性も付く。
「でも、いい勉強になりました。人間と触れ合う機会は滅多にないですし」
「そうか」
再び沈黙。次に破ったのはロジェであった。
「お願いがあるんだが・・・」
「起きて、起きてー!!」
ベッドを激しく揺さぶられ、ロジェはその眼をゆっくり開いた。やけにはしゃぐフィーリの声。時計を見ると朝七時半。普段のフィーリなら起きる様子も見せない時間である。
「ロー君ってばぁー♪おーきてぇよぉ!!」
「なんだ、朝から」
ロジェのベッドに飛び乗り跨るフィーリはじゃーんといって手に持った品を見せる。白い包装紙、赤いリボン。それは紛れも無くプレゼントであった。
「サンタさん来たんだよぉ♪プレゼント置いていってくれたの♪」
「ほぉ」
開けてみよーっと、とリボンを解いたフィーリは歓声を上げる。
「わぁ!!マフラーと手袋だぁ!!」
真っ白なマフラーと同色の手袋。羽のような柔らかな素材で編まれていて保温能力に富んでいる。ありがとうサンタさん、とフィーリは天に向かってお礼する。
大切そうにマフラーと手袋を抱いたフィーリは思い出したように言った。
「そう、夢の中でね。ロー君がサンタさんの格好してプレゼント配ってたよ」
「俺はそんな格好しないぞ」
ロジェは笑った。
「これを・・ですか?」
「あぁ、何かしないと五月蝿いからな」
ふふふ、という笑い声。
「大切じゃなければ作りませんよ。手編みのマフラーと手袋なんて」
ローサンに願いを込めて Fin
by vrougev | 2006-12-24 23:36 | キセツモノ