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ショコラーテで乾杯を   2

かくして二人はチョコレートを作るため、街中の食材店を廻る事となった。
「菓子の作り方など分からない」と主張するロジェの意見は聞き入れられず、にこにこと微笑んだままフィーリは「ロー君は優しいなぁっ♪」と言い通したのだ。
結果、条件を飲んだのだ。腕にしがみ付かない、と言う条件付で。
放っておけばいいだろう、と第三者なら言えるかもしれない。
だが、ロジェは繰り返される笑みと期待を無視する事は出来なかった。裏の思惑に気が付いていてもだ。
そう考えるとロジェは優しいのかもしれない。
「あったあったー♪此処で売ってるんじゃないかなっ♪」
嬉しそうな声を上げ、フィーリはある店を指差した。
パステル色を基調とした可愛らしい外観の建物にぶら下がる看板には『洋菓子専門食材』と書かれている。
男二人が入るのは少し、いやかなり躊躇われる店構えに思わず一歩引きそうになる。
フィーリはロジェの腕をしっかりと掴み、目をきらきらと輝かせて言った。
「ね、入ろ?入ろっ?」
約束どおりフィーリはしがみ付いていない。可愛らしく女の子のようにお願いしているのだ。
趣味としか思えない程徹底された女装をしているフィーリは今、何処からどう見ても女の子である。
しかも絶世の美少女、と付いてもおかしくないぐらい。
故に道行く人々の視線は全て此方に向いていた。様々な思いの込められた視線が。
ある者からは興味としての、ある者からは羨望の、またある者からは嫉妬の。
居心地は素晴らしく、と称したくなるほどに悪い。
「……あぁ」
早くこの場から脱したく、ロジェはフィーリの言葉に同意する。
どちらにしろ作らなければいけないのだから用事は早く済ませるに越した事はない。
ロジェの同意に「わぁいっ♪」と一層笑ったフィーリを見て、ロジェは隠れて深く溜息をついた。
俺は一体何をやっているんだろうか。

by vrougev | 2008-02-05 02:34 | キセツモノ