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テガミ

部屋左端本棚、上から二段目の中央に立てられたブックスタンドの下
小さな小さな私の宝物は其処にそっと眠っている
訂正しよう。私の宝物だったモノはは其処に眠っていた

潮風と共に出会って、泣きながら笑って、結果悩んで
失くしたなんて見え透いた噓を盾に、ずっとずっと忘れたフリをした
揺れた鉛筆の線。濃い色、薄い色。二つの誤字。独特の言い回し。意志の弱い言葉
いったい何を持っているんだろうね、なんて一人笑った日もあったり、なかったり

本当は知っていた
これが書き手の意思ではなく周りからの威圧によって書かれたものだって事
だからこその言い回しなんだと気が付いたのは歌が響いたあの日
伝言ゲームはなかなかうまく伝わらない。だから、気が付くのが遅れてしまった
唯一つ分かったのは、重荷のひとつが私だってこと位

それから時が経ち、フリが本気になり、そしてある日突然思い出させることになる
夢を見た。白靄の中で驚いた笑顔で迎えてくれる変わらぬ存在
そんな笑顔を向けられたことはないのに、どうして覚えているのだろう

そして、今。私は再び手紙を開いた
乱雑に畳まれた其れはすっかり黄色くなってしまった。もう四年。まだ四年
きっとこれから先、会うことのない大切な友人からの手紙
「まだ夢見てる?」   
「残念ながらまだ。でも、これから先それ以上のモノが見れると信じてる」
「だといいね」
手の中でくしゃりと潰れる小さな紙。歪な球になったそれを私は放り投げた
向かう先、大きなゴミ袋はぽっかりと口をあけてそれを胃へと流し込む

「ありがとう」
そしてたくさんのごめんなさい

もし会えるのなら一つだけ問わせて
「貴方は素敵な人と出会えて笑えるようになった?」
なんて、ね

私?私は………

by vrougev | 2008-03-26 23:18 | 小話