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ラッピングのオモテガワ   2

「ロー君!何処行ってたの!?遅くて心配したんだよ!?」
結局、ロジェが宿に戻ったのは夜遅くだった。手には大きな紙袋を何個も何個もぶら提げて。
「……すまん」
フィーリの非難の声に詫びながらロジェは時計を見やると、まだ日付は変わっていない。
「ロー君、何かあったの?僕、ずっと宿に一人で寂しかったんだか…」
「フィーリ」
フィーリの小言を遮り、ロジェはその両手に持った大量の紙袋をずいと差し出す。
「バレンタインだ」
一瞬虚に包まれた表情をしたフィーリは紙袋を受け取り、中を見て驚きの声を上げた。
「これ全部……!?」
「チョコレートだ。好きなものを、と思ったんだが…よく分からなかった」
だから自分が知っているモノを全部作った。単純な思考だと言われればその通りだとしか答えようがない。
やはり愚かな行為だったか。
渡した後にどうにもならない羞恥に襲われロジェは背を向けた。
「や、苦手なら無理に貰わなく…」
「馬鹿だなぁ、ロー君は♪」
どん、と背中に衝撃が走る。フィーリが背中に抱きついたのだ。じんわりと肌に温かさが伝わる。
「馬鹿とはなんだ」
「ほんと馬鹿だよ!僕はロー君が好きなの!!」
だからね、とフィーリは続ける。
「ロー君がくれたものはみーんな嬉しいし、ロー君さえいればいいの!!……分かる?」
「……残念ながら、俺には分からないな」
暫く思考は働かせてみてもロジェにその感情は理解出来そうにない。
「だが、善処はしよう」
いつか分かる日は来るのだろうか。フィーリの言葉も、静羽の言葉も。
「大好きだよ、ロー君♪」
ロジェの回答に満足したのか、フィーリはくすくすと笑って、ロジェに回した手に力を込めた。
「僕もロー君にバレンタインプレゼント買って来たんだ♪気に入ってくれると嬉しいな♪」

静羽は言った。
“「好きな人がくれたものは、なんでも嬉しいのですよ。だって真剣に自分の事を考えてくれたのですから」”

ロジェが無意識下でフィーリと同じ感情を理解し、抱いている事を自覚するのは……また別のお話。


                                     ラッピングのオモテガワ   Fin

by vrougev | 2009-02-14 23:54 | キセツモノ