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はろうぃんな人々   6

そして場所はは更なる次元へと飛ぶ。
「サキトさんも、ハロウィンってするんっすね~」
「うん、するよ」
東京の一角のとある大通りに面したお店。喫茶、夢視堂想紫苑亭。今日はハロウィンなのである。店主サキトと、アルバイトの久遠は午後の昼下がり仕事の真っ最中だった。季節に趣をおいているとはいえこのお店でハロウィンはやらないと思っていたが・・だ。しっかりと飾りつけをなされている。そして本日は仮装衣装での接客であるといわれ、それはしっかりと久遠の分まで用意されていた。俺に用意されていたのは首を覆うような形の長い服と、白のロザリオ。神父といったところなのだろうか。驚き、その準備のよさに呆れもしたが当のサキトはさも当然といった様子で楽しそうに自らの衣装を着こなし、仕事をしているのだった。前日にはなかったこうもりの絵が窓いっぱいに羽を広げているのを見ながら久遠は尋ねた。
「ハロウィンって日本じゃ形だけなんっすよね~ホントは何をするためにあるんですか??」
「ん~詳しくは僕もしらないんだけど・・」
知らないのに仮装するんだ。
そう思った久遠は再度窓ガラスの絵に目を向ける。しかし、よく出来たイラストだ。こうもりらしさが良く出ている。らしさとはなんだと聞かれたら困るのだが。そして、サキトはそれに合わせてか背中に黒い羽を生やしている。悪魔だろうか。
「魔力が高まる大切な日だよ」
そう言ったサキトの顔は何を考えているのだか分からない表情。そんな顔を久遠は知らない。のほほんと答える。
「へぇ~とりあえず、今日のまかないパンプキンパイで!!」
「そうだね、終わったら一緒に食べようね」
「おっしゃ~パイ食べるぞ~!!」
「すみませ~ん。オーダーお願いします~!!」
「はい、今うかがいます~!!」
ぱたぱたと俺はお客様のほうへとかけていった。
その後ろでにっこりといった様子で笑ったサキトの顔はいつものとおり。
実に楽しそうであった。

by vrougev | 2005-10-28 00:34 | キセツモノ