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五話   礎の大切さ   13

遠い過去を見た気がした。
体が軽い。


強くなるために乗り越えた過去。


何故今更こんなものが出てくるのだろうか・・・・。


先ほどとは違い真っ暗な世界に浮かぶ。目は虚ろ。感覚はない。
今度こそ死後の世界に行くのかと思った。
ぼんやりと見つめる先に一人の人影。
長い髪を下のほうで結い、その薄茶の髪が揺れている。
黒い衣に、下部に紫の輝く布地が巻きつけてある。
「フィーリ?」
思わず力ない声で名前を呼んだ。
フィーリとは誰だったか、そんなことすら思い出せない。ただ、体に残る記憶のみで呼んだ。その人物は呼びかけに微動だにしない。
よく見たら光を纏っている。あたたかで、柔らかそうな光。
この場所には不似合いだと思った。
「・・・ごめんね」
背中越しに言葉を漏らした声で男だと分かる。
あぁ、そういえばこんな声の人物もいたかもしれない。
だが、何故謝るのだろう。
「約束やぶっちゃったぁ」
約束。そんなもの交わしただろうか。交わしたとしてもどんなものだったかすら覚え名が無いのだから分からない。しかし、彼は泣いているような声だった。
「ロー君怒るかもしれないけど・・破っちゃった」
ロー君。確かにそう呼ばれていた。
「けど、ロー君はこんなところにいちゃいけないんだよ?」
疑問系が残る声。その理由は分からなかった。
「だから、向こうに戻してあげる」
「お前は・・戻らないのか」
ふと、浮かんだ言葉がそれだった。えっ、という返答に困る声が聞こえた後、少し嬉しそうな、いや、困ったような声が響く。
「世界の決定に従うよ」
だから、交わす言葉は一つだ。
「また、後でね」
そのまま何かに飛ばされるように・・そこでの意識は尽きた。

by vrougev | 2006-02-20 23:44 | きらきら☆まじしゃん【休止中】