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五話   礎の大切さ   18

「大丈夫なのか」
思わずそう、声をかけてしまったロジェにフィーリは屈託の無い笑みを浮かべてうなずいた。
「大丈夫だよ」
先導する女官はくすりと微笑んだ後、ひとつの部屋の前で止まった。
「こちらでお待ちです」
「ありがとっ♪暦さん」
そういってフィーリは言葉通りためらいも無く扉を開けた。
「父さん、失礼~」
「お~やっと来たか、この馬鹿息子が」
「馬鹿ってなんだよぉ~」
言葉の暴力じゃないかぁ~と漏らすフィーリに複雑な心境を抱く。さっきまでその言葉を吐いていたのはどこのどいつだろうか。
中央の椅子に座り、その周りにCIRCLEの面々が好き勝手座ったり、立ったり。
そんな中フィーリは小首を可愛らしくかしげて尋ねた。
「用はなぁに?僕、まだ起きたばっかでよくわからな・・・」
「試験は合格じゃ」
フィーリの声をさえぎって王は言った。ほぇ?という声がフィーリから微かにもれたのをロジェは聞いた。そしてロジェがいまいちの見込めないうちに話は進む。
「あれが・・やっぱりそうだったの?」
「そ~じゃ~」
そ知らぬ顔で髭をしごきながら王はほののんと言った。
「何処にでもいってこ」
半ば投げやりのような台詞にフィーリは眼を輝かせ、そして少し急いたように聞いた。
「いいの!?」
「ただの・・」
王が何をいいたかったのか。それを言う前にフィーリはにっかりと笑った。
「それは分かってるよ、大丈夫っ♪」
「名前は『フィーリ』なのかのぉ?」
「うん、これは今僕がココに存在している契約の名。二つ名は変えられないけど・・これは運命に左右される一つ名。ここにいた時の僕も僕であるけど、これからは『フィーリ』としての僕。・・・それじゃ、ダメかな?」
ふっと下を向いたフィーリの眼は翳っていた。過去に何があったかは知らない。
しかし、探ろうとも思わない。声は思わぬところから飛んできた。
「いいんじゃないのか」
「それがバー・・じゃなかったフィーリの望む道ならいいでしょぉ~」
「別に一つ名が変わろうとも、魂が変わるわけじゃないですし」
「そ~だよ!!縛られることなくね?」
「フィーリさん」
驚いたように顔を上げてかけてきた静羽を真っ直ぐ見た。静羽は笑った。
「貴方達の旅に幸運を」
そういって手を組んで祈る。彼女の横の髪がふわりと揺れた。
幸せを与える側にも幸せを。
我らと共に在りし鳥。
どうか、旅に災いがありませんように。
「ありがとう、静ちゃん」
そういって屈んだフィーリは静羽をぎゅっと抱きしめる。
この相方の抱きつき癖もなんとかしないとなぁと思いながらロジェは微笑むのであった。

by vrougev | 2006-02-28 19:25 | きらきら☆まじしゃん【休止中】