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九話   RUN AWAY!!   17

がらりとした室内に駆ける音はよく木霊した。音は二つ。ロジェのものとフィーリのものだけだ。
空間はまるで止まったかのように音を立てなかった。
剣士の手によって開け放たれていく扉。主のいない部屋達の並びにロジェは舌打つ。
一体何処に隠れたのか。
「ロー君」
横に立っていたフィーリが先へ進もうとしたロジェの服を掴む。その顔はいつものようにふざけたものではなく何かを探っているかのように眉間に皺が寄っている。
「僕たち以外の誰かが魔法を唱えているみたい」
「アクトとレストじゃないのか?」
別行動をしている双子が敵と遭遇し魔法を使ったとしてもなんら不思議は無い。フィーリはロジェの言葉に首を横に振り否定した。
「違うよ。彼等は精霊だから・・純粋な気しか使えない」
違いが良く分からないものの「ほぉ」とロジェが相槌を打つ。
「これは濁り過ぎているんだよ。相当やばい禁術か、大掛かりな仕掛けかってところかなぁ?こんな邪悪なモノ使う人の気が知れるよ、全くもうっ!」
何に対して怒っているのかは分からないがフィーリは腰に両手を当て、頬を膨らます。
「だって、こんな不純だらけの魔力をさ、魔法を動力としているものの近くで使うんだよ!?悪影響がでたらどうするのさ!!考えられないじゃないか!!」
「影響するのか」
魔法関係の知識は全くないロジェは知らなかったが魔力とはそういうものらしい。ずるずると引きずられる様に影響を及ぼすらしい。まだ試作段階とも言えるこの乗り物が狂ったら一体どうなるのだろうか。
そんなこと想像したくもない。一刻も早くどうにかしなければ。
「その魔力発されている方向は分かるか」
「真っ直ぐ行った先に・・・え、何これ、どうなってるの・・・?」
突然耳を押さえたフィーリに何事かと近寄ったときその理由がロジェにも分かった。
うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
こういうものを断末魔、と言うのだろう。廊下中を響き渡る大気はびりびりと震える。あまりにも凄い声に思わずロジェも耳を塞ぐ。それでもつんざく獣のような悲鳴は耳に刺さるのだ。
「一体何があったんだ」
「分かんない・・。ただちょっと声音的にやばめー?」
やばめとか言うレベルじゃない。ただ事じゃないのは確かだ。絶対に何か嫌な事が起こる、と今まで培ったロジェの勘が叫んでいた。確証はない。響き止まぬ声の中ロジェはフィーリの腕を引き立て、言った。
「急いで、止めに行くぞ!」

by vrougev | 2007-12-31 22:18 | きらきら☆まじしゃん【休止中】